Sakura ARC
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「フォトリアルノベル」とは?AIと実写背景が融合する次世代のエンタメミステリー

Sakura ARCが開発中の新作『神屋探偵事務所:女子高生の消えた夏』は、これまでのアドベンチャーゲームとは少し異なる「フォトリアルノベル(Photoreal Novel)」という独自ジャンルを掲げています。

本記事では、この「フォトリアルノベル」というスタイルがどのようなものか、そして従来の「ビジュアルノベル」や「実写ゲーム」と何が違うのかをご紹介します。

【実写背景×AI生成人物】

大濠公園の実写背景とAI生成された神屋・ひかるのバディショット

「フォトリアルノベル」の定義

フォトリアルノベルとは、極めて写実的(フォトリアル)な素材を用いて、映画やドラマのようにリアルで没入感の高い世界観を構築したビジュアルノベルのことです。
本作『神屋探偵事務所』のように「現実の実写写真」と「AI生成技術」をシームレスに融合させるアプローチが基本ですが、必ずしも実写写真が必要なわけではなく、「すべてをAI生成のフォトリアル素材のみで完結させる」ことも可能な、自由度の高い新ジャンルとして定義しています。

一般的なビジュアルノベルが「2Dのアニメ調イラスト」を主体とするのに対し、フォトリアルノベルは「実写映画やTVドラマ」のような現実的な質感を追求しています。

名作「実写サウンドノベル」との決定的な違い

実写を用いたテキストアドベンチャーといえば、『街 〜運命の交差点〜』や『428 〜封鎖された渋谷で〜』といった歴史的な名作「サウンドノベル」が存在します。それらは実際の俳優陣と膨大なロケ撮影という物理的なパワーで制作された素晴らしい作品です。

対して、新たに提唱する「フォトリアルノベル」は、「AI技術が介在していること」が絶対条件であり、以下の点で過去の名作たちと決定的に異なります。

1. 舞台は「完全な現実(リアル)」と「架空の空間」のシームレスな融合

『神屋探偵事務所』では、開発者自身が福岡の街(中洲、大濠公園、天神など)を実際に歩き、撮影した本物の実写写真を背景として多数使用しています。作られたセットではなく、今そこにある「令和のリアルな風景」がそのままゲームの舞台のベースとなります。

【実写背景×AI生成人物】

大濠公園の実写背景とAI生成された制服姿の女子高生ふたりと私服の少女の自然なスナップ

一方で、すべての背景が本物の写真というわけではありません。例えば、主人公の拠点となる「神屋探偵事務所」の室内や、深夜の「ラーメン屋台」、あるいは「学校の部室」や「廊下のロッカー」といった特定のシチュエーションには、完全にAIで生成された架空のフォトリアル素材を使用しています。

【完全AI生成によるフォトリアル画像】

完全にAIで生成された架空の学校の部室(軽音部)

実写と見紛うレベルのAI生成背景を自然に織り交ぜることで、ロケ撮影が困難な場所であっても、没入感を一切損なうことなくリッチで密室的な空間を作り出せるのが「フォトリアルノベル」の強みです。

2. AIによる「極めて写実的な(Photoreal)」キャラクター表現

本作では最新のAI画像生成技術を駆使し、実写背景から浮かない「フォトリアル」なキャラクターや証拠品を描き出しています。

もちろん、「特定の俳優やモデルをキャスティングして撮影する」という完全実写のアプローチも大いに魅力的であり、将来的にはぜひ実現したいという強い思いもあります。しかし、現状の個人開発において、TVドラマに匹敵するリッチで多様なビジュアル表現を現実的なコストで実現するための最適解として、AIを活用した「フォトリアル」手法を採用しました。

また、開発的な裏話としてAI生成において、イラストよりも実写(フォトリアル)の方がキャラクターの同一性(顔や骨格の一貫性)を維持しやすいという技術的なメリットもありました。
イラストの場合、顔や体型といった「人物の同一性」もさることながら、筆のタッチや塗りといった「絵柄の維持」が大変なのです。その点、実写は「実写であればいい(現実世界の光やレンズの物理挙動という共通の規格がある)」ためテイストがブレにくく、全編を通して違和感のないリアルな表現が可能になっています。

動画ではなく、あえて「ノベル形式」を選ぶ理由

現在、AIによる動画生成技術も急速に進化しています。しかし、本作は映像主体ではなく、あえて静止画をベースにテキストを読み進めるノベルゲーム形式を採用しました。

その理由は、ミステリーの緻密なストーリーや推理を自分のペースでじっくりと楽しむには、映像が流れていくのを見るよりも、自らテキストを読み進めるフォーマットの方が適していると考えているからです。……と、それらしい理由を並べてみましたが、ぶっちゃけてしまうと個人の開発環境において、長編ゲームの全編を動画でカバーするのは工数・費用・技術的に不可能だったからというのが最大の理由です(笑)。
現状の動画生成AIでは、品質の安定性や生成コストの面で、個人が全編フルモーションのゲームを作るにはまだ高すぎるハードルがあります。そのため、個人でも高品質なビジュアルとストーリーを両立できる現実的な最適解として、静止画ベースの「ノベル形式」に落ち着きました。

なぜ「フォトリアルノベル」なのか?

「圧倒的な臨場感を届けるため」……とかっこよく言いたいところですが、実のところ、最初から実写を狙っていたわけではありません(笑)。

開発当初は「セミリアルなイラスト」や、『探偵 神宮寺三郎』シリーズのような「ハードボイルドな劇画タッチ」を想定して試行錯誤していました。
もちろん、LoRA(追加学習)を組んだり専用モデルを調整すれば、ある程度キャラクターや画風を固定することは理論上可能です。
しかし、AI生成でイラストとして出力する限り、どうしても「いかにもAIが描きました」という独特の質感や“AI絵臭さ”が抜けなかったのです。少なくとも本作の開発を開始した2025年時点の技術レベルでは、AIイラストは一般の人が見ても「あ、これはAI絵だな」と瞬時に見破られやすいクオリティだったのです。

さらに、イラストは手や顔などの「描写の破綻率」が非常に高く、理想の1枚を出すためには何百回も生成を繰り返す果てしない「ガチャ」を回す必要がありました。その点、実写(フォトリアル)は物理法則やレンズの挙動という強力なベースがあるため描写が破綻しにくく、「クオリティの打率」が良かったという現実的な開発上の理由もありました。

そこで、試しに「完全な実写(フォトリアル)」のプロンプトで生成してみたところ、「あれ?これ、下手にイラストを描かせるより、実写の人物を出力させた方が圧倒的に簡単だしクオリティも高くなるぞ!」と気づいてしまったのです。

結果的に、この「開発コストとクオリティの最適解」として辿り着いた実写スタイルが、本作のミステリーの世界観や、実写の福岡の背景と奇跡的にマッチし、「フォトリアルノベル」という形に行き着きました。

……それに何より、星の数ほどある「2Dアニメ調のノベルゲーム」が並ぶSteamのストアページの中で、「実写のサムネイル」が混ざっていた方が圧倒的に異彩を放って目立つ(映える)という、非常に打算的なマーケティングの理由もあります(笑)。

世界へ向けて:#PhotorealNovel

「実写を用いたゲーム」自体は決して目新しいものではありません。しかし、それらがこれまで大企業のスタジオと多額の予算を必要としていたのに対し、「単独の個人(IT素人のソロ開発!)」がAI技術を駆使して、このリアルな実写ミステリーを構築できるようになったという事実は、日本のゲームファンはもちろん、海外のプレイヤーやクリエイター陣にも強烈なインパクトを与えるはずです。

「個人のアイデア」と「AI」が合わさることで限界を突破した、新しいインディーゲームの表現。それが「フォトリアルノベル」です。

また、この「フォトリアルノベル(Photoreal Novel)」という名称は、当方が独占するようなものではありません。
同じように「実写×AI」の組み合わせで新しい表現に挑戦しているクリエイターの皆様がいらっしゃれば、ぜひ一緒にこのジャンル名を謳ってみませんか?

もちろん、ビジュアルが実写になったからといって、ゲームシステムやストーリー自体が急に魔法のように凄くなるわけではありません(笑)。ですが『神屋探偵事務所』は、個人開発だからこそ描ける唯一無二のエンタメミステリーになるのではないかと思っております。ぜひ2026年リリースの『神屋探偵事務所:女子高生の消えた夏』を楽しみにお待ちください!

【完全AI生成によるフォトリアル画像】

完全にAIで生成された架空の神屋探偵事務所の室内

おまけの裏話

ちなみに「特定の俳優をキャスティングする」という話ですが、実は一番コストがかからない究極の方法として開発者自身をキャスティングするという手も使っています。
実を言うと、本作の主人公である探偵・神屋憲悟のビジュアルは、開発者である私自身の顔写真をベースに、AIで少しだけイケメン化(美化)して生成したものです。

画像やPVを見て「あれ? こいつ言うほどイケメンか?」と疑問に思ったそこのあなた、非常に冴えてますね!(笑)

これは単なるお遊びや開発費削減というだけでなく、AI生成にありがちな、誰もが似たような顔になる量産型イケメン(AI臭さ)を回避し、プロンプトだけでは難しい“リアルな顔の非対称性”や、舞台である福岡に馴染む生々しい“九州人顔”の骨格を再現するための、極めて真面目な技術的・芸術的アプローチでもあります。

しかし、その絶妙な“いびつさ”や“現実感”こそが、AI生成された背景や他のビジュアルの中で、主人公・神屋憲悟というキャラクターが「地に足のついた実在の人間」としてプレイヤーの案内人になるための、重要なピースになるのではないかと思い、やってみました。
「IT素人のソロ開発×AI」だからこそできる、新しいキャラクター表現の探求かもしれません。

About SAKURA ARC NEWS & LOGS

Sakura ARCの最新情報や制作現場の声を綴る公式ログアーカイブ。AIエージェントと共に歩む、新しい時代の個人開発を記録しています。

Profile:Haru Minamo

クリエイティブブランド『Sakura ARC』主宰。
IT未経験からAIを相棒にゲーム制作を開始。ミステリーADV『神屋探偵事務所:女子高生の消えた夏』を鋭意制作中。AIにボス呼ばわりされている。